Better Life for Farm Animals Japan 発足イベント

2021年9月28日(火) 19:00-20:30

共催 Slow Food Ginza

第一回 卵をどう選ぶ? 卵に関わる「アニマルウェルフェア」について一から話を聞いてみよう!!

ゲストスピーカー

The Humane League Japan 上原まほ

黒富士農場 向山一輝

共催 Slow Food Ginza

申込数 40名 参加者数 25名

イギリスに本部を置く家畜のアニマルウェルフェアを推進する国際NGO Compassion in World Farming(CIWF) の助成を受けたことをきっかけに、Better Life for Farm Animals Japanを発 足しました。代表の池嶋丈児といいます。コロナ禍のため主にオンラインでイベントを開催しな がら、日本における家畜のアニマルウェルフェアの振興に努めたいと思います。今回は、第一回と なるオンラインイベントの開催を開催します。Slow Food Ginzaに共催としてご協力いただいて います。

まずはthe Humane League Japanの上原(カバリヤ)まほさんよりお願いします。

登壇者 上原(カバリヤ)まほさんのお話。

The Humane Leagueとい

The Humane Leagueという、アメリカの動物擁護のNGOで家畜福祉、その中でも採卵鶏に特化 した仕事をしています。採卵鶏のアニマルウェルフェアの観点から、大量の卵を使う企業にケージ フリーの卵を使いませんかという提案をして、その目標を達成できるよう協働に努めています。

【The Humane Leagueについて】

The Humane Leagueは、もともとアメリカで大学生が作ったグループです。当初は毛皮の反対 など色々な動物擁護の活動をしていました。けれども、より効果的な運動をするために、採卵鶏 に特化して卵をケージフリーに変えることで、沢山の鶏をケージから解放しようとしました。ま ずはそれぞれの大学のカフェテリアに行って、卵をケージフリーに変えるように運動を展開しま す。1年後には100くらいのキャンパスがケージフリーに変わったという実績ができました。キャ ンパスを変えるために、カフェテリアを運営するフードコントラクト企業に働きかけたことが、 成功のきっかけとなりました。フードコントラクト企業に、キャンパスだけではなく使っている 卵を全てケージフリーにしませんか?という運動を2015年に本格的に始めました。ACEという動 物愛護団体を評価する機関があり、7年間続けてトップチャリティーに選ばれています。そのおか げで寄付金や助成金が集まっています。欧州の拠点としてイギリスに一つ、ラテンアメリカの拠点 としてメキシコに一つ、2017年にはアジアのハプとして日本に拠点ができました。どこも同じ温 度感でケージフリーの運動を展開しています。

【私がどうして今の活動をしているか】

どうして私がこんな仕事をしているかと、よく聞かれることがあります。 祖母が、地域の猫のおばあちゃんのような存在になっていて、猫が死んでいるとどうにかしてくだ さいと連絡が入ったり、母も一緒になって地域の猫の避妊・去勢をしたりしていました。だか ら、猫といえば自宅に連絡が入るような家庭環境でした。

私にとっても、いくつかのきっかけとなることがあります。小さい頃に読んだ本に、「シャー ロットのおくりもの」という本がありました。子豚のウィルバーとクモのシャーロットの話です が、子豚が殺されてしまうことにショックを受けた覚えがあります。それから、チンパンジーの研 究者で有名なイギリスのジェーン・グドールさん。ダイアン・フォッシーさんは、アフリカのマウ ンテンゴリラか絶滅の危機に瀕している時に、アフリカに行って保護活動と研究をされていまし た。動物の行動学者、霊長類学者です。最終的にはアフリカで殺されてしまいます。彼女のストー リーは、「愛は霧のかなたに」というハリウッド映画で観ることができます。このような人たち の話にとても感銘を受けました。15年前くらいになるのか、地球生物会議という日本の団体で野 上ふさ子さんに会ったことが私の今の直接の原動力になっています。野上さんはとても冷静で、 勤勉な方で、現実的な提案をし、動物愛護活動というのが、動物愛護に関わる一部の人だけでは なくて、市民運動に成長していくような運動をされていた方です。そこで、ロビー活動や、まずは 調査、知ること、知ることとは単純に知ることではなくて、緻密な調査が必要だということに気 がつき、自分も学校に戻ったりしました。

野上さんが仰っていたのは、最初に会った時に、「私は今動物に起こっていることにすごく怒り を感じる」と話をしたら、「まほさん、怒りは勉強に使うんですよ。しっかり勉強していきましょ う!!」と声を掛けていただいたのが原動力になっています。今の私がいるのもそれが土台となって います。

【めんどりについて】

現在のめんどりの祖先は、8,000年くらい前に東南アジアのジャングルにいた赤色野鶏と言われま す。それが家畜化されて、生産性を高めるために交配を繰り返し、現在のように一日に一個卵を 生むようになっています。人の手が加わっていない鶏は、年間30個程度しか卵を生まないと言わ れているので、現在は生産性を重視した形に変わっています。

もともと鶏は、ジャングルの地面で暮らしていました。他の動物に襲われやすいので、寝る時は高 い場所で休息するという習性があります。産卵も安静な場所を探します。また砂浴びや土浴びとい う行動をすることで、体の清潔さを保ったり、お風呂に入っているようなものなのか、気持ちよ くて声を出すこともあります。もう一つ生まれ持つ習性は、ついばみ行為です。地面を突くという のも、自然な欲求として高いものです。脳の刺激にもなっているし、行動の多様性としても必要 で、行為が満たされていないとストレスになります。平飼いの時も、床面に適切な敷き材がない と、ついばみの行動が担保できないことにもなります。

夜には高い木に止まって休息する、砂浴びをする、暗く静かな巣箱で産卵する、ついばみ行動を するなどは、鶏が生まれながらに備えるごく自然な行動欲求です。これらを満たすことは、アニ マルウェルフェアを担保するうえで欠かせないものと考えられています。

ある研究によると、鶏は知性が高い生き物とされます。他の鶏のストレスを認識し共感したり、 短い将来という概念を持っていたりします。また、色彩の認識ができる、幅広い24以上の声質の 判別ができる、数がカウントできるなど、知性の高さを示す研究があります。

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【鶏の飼い方の種類】

2019年のInternational Egg Commission(IEC)のデータによると、日本の養鶏場では94.7%がバ タリーケージというケージの中で鶏が飼育されています。日本の畜産技術協会のアンケートによ ると、多くの農家さんでは1羽あたりの飼育面積が350から430㎠未満とかなり狭いです。B5サイ ズの紙面の大きさが1羽にあたえられている面積ということになます。1つのケージの中には2羽 飼育されることが最も多く、次に5から6羽になります。ケージの高さは40cm以上45cm未満が 一番多い回答です。このような環境で生活していると、鶏にはストレスとなり、脚の変形や呼吸器 の病気が発生することがあります。また、つつきあいが増えて、ひどくなると赤い血が出てさらに 深刻なつつき合いを起こすことがあります。

卵に関わる「アニマルウェルフェア」について一から話を聞いてみよう!!

現在バタリーケージが主流となっています。一見清潔には見えますが、鶏にとっては羽を広げるこ ともできない狭いところにいます。ついばみの行為や止まり木にとまるなどのができない殺風景 なところにいるので、行動の多様性は全く保てません。効率に特化した飼育方法だと考えます。

卵に関わる「アニマルウェルフェア」について一から話を聞いてみよう!!

バタリーケージから、少しアニマルウェルフェアへの配慮を向上したのがエンリッチドケージで す。ある程度の福祉は担保されると思いますが、高さがなくて垂直方向の運動ができないし、つ いばみ行為ができません。床面に敷き材があってついばみ行為ができることは大変重要だと私は 理解しているので、それができないのは福祉としては不足だと考えています。

卵に関わる「アニマルウェルフェア」について一から話を聞いてみよう!!

エイビアリーシステムは、先ほどの二つとは違ってケージがありません。確かに鶏舎の中にいて、 自然の木などはありませんが、垂直の運動は担保できるし、敷き材も担保できているので、ある 程度の福祉が保たれています。先ほどのエンリッチドよりは、垂直運動もできるので格段によいと 考えます。

私たちがお願いしていることは、最低でもこの形にしましょうとお話しています。企業の方たちに もそのようにお話しています。企業は、卵を買う側の方たちなので、こういう話をして、生産者を 選ぶ時は最低エイビアリーにしましょうと話をしています。

エイビアリーを勧めるのは、福祉の担保もありますけれども、ある程度の羽数を担保できるの で、卵の生産量を確保できる面もあります。一つの企業にとっては、卵の値段でかなりの利益の 差がでるので、大きなポイントになるのでこれを最低条件として勧めています。

卵に関わる「アニマルウェルフェア」について一から話を聞いてみよう!!

エイビアリーシステムのなかでも、ウィンターガーデンというものをつけるものもあります。ポッ プホールという窓のところから鶏が外にでて、野外に出ることができます。野外は金網で囲まれて いるので、野鳥が入ってくる恐れはありません。ここでついばみ行為ができます。立地の事情もあ るので、ここまで実現するのは簡単ではないかもしれません。

卵に関わる「アニマルウェルフェア」について一から話を聞いてみよう!!

次の写真は、後でお話いただく黒富士農場さんのものです。平飼い放牧飼育という形になると、 本当に理想だと思います。