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鶏肉をどう選ぶ?
鶏肉に関わる「アニマルウェルフェア」について一から聞いてみよう!!
【後半】

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次に、鶏肉業界で起こっている問題について説明したいと思います。

2016年3月29日にウォールストリート・ジャーナルに掲載された記事です。日本語に訳すと、「鶏の大型化に思わぬ弊害、『木のような』ムネ肉 世界中で販売される骨なしムネ肉の約5-10%は 『ゴムのように硬い』」というセンセーショナルな記事が出ました。


詳しく説明する前に、こちらの写真を見ていただきたいと思います。同じ出荷日齢のブロイラーを比べたものですが、左側が1957年、中央が1978年、右側が2005年のものになります。わずか50年で全く見た目の異なる生き物になっています。

グラフとして示すと、横軸に年代、縦軸に体重に対するムネ肉の割合になります。1994年、ムネ肉は320g、2011年にはムネ肉が600g。わずか17年の間にも出荷体重は125%増、ムネ肉は187%増となっています。育種改良の結果ということになりますが、飛躍的に増体の性能が向上しています。

お肉にも増体の結果が出てきています。

写真左の0番と書いてあるのが正常なお肉です。右に行くにつれて、白い線が入っています。牛肉のサシのようなものです。脂肪分が繊維として現れている状態です。

実際に栄養価がどう変わっているかというと、次の図で示します。横軸が脂肪の割合です。縦軸の方がタンパク質の割合です。

図の左は正常のお肉で、中央部は少しホワイトストライプが出ているもの、右側の方が深刻なホワイトストライプが出ているものです。傾向としては、ホワイトストライプというサシが入る現象によって、ムネ肉が高タンパクではなく脂肪分が高くなります。栄養価としても変性していることがわかります。

次に、木質化胸筋、英語でWooden breastという肉質の変性が上げられます。

左側が通常のムネ肉の断面です。右側が深刻な木質化胸筋です。私も食べたことがありますが、硬くてゴムのような感じです。名前の由来もそのようなところから来ていると思います。実際にマリネとかソースを絡めて鶏肉を焼く時でも、保水ができないので料理としてもよろしくない状態で す。

木質化胸筋の栄養価は、次の表に示されます。

図中のNormalというところが通常で、WBはWooden Breast(木質化胸筋)、WB/WSはWooden BreastとWhite Stripe(ホワイトストライプ)を同時に発症している場合です。

Fatの脂肪分のところを見ると、木質化胸筋やホワイトストライプを発症している例では脂肪分が高くなっています。ホワイトストライプと同様、木質化胸筋も脂肪分が高くなる傾向があります。

 ホワイトストライプや木質化胸筋は、病的な炎症ではなく、過度に生産性を追求し短期間で大きくすることを追求しすぎた育種改良による弊害と考えられます。

現状は、ご安心いただいて問題ないと思います。工場ではねるので、一般のスーパーや消費者のもとに変性したお肉が届くことは少ないと思います。

世界的には、アニマルウェルフェアも考慮して、鶏肉の基準を明確に区分けする動きがあります。

アニマルウェルフェアとは何でしょう?

日本も加盟しているOIE(国際獣疫事務局)のガイドラインでは「5つの自由」が定義されています。

1. 飢え、渇き及び栄養不良からの自由
2. 恐怖及び苦悩からの自由
3. 物理的及び熱の不快からの自由
4. 苦痛、傷害及び疾病からの自由
5. 通常の行動様式を発現する自由

1から4は、改善することで生産性も向上するので一般の生産者でも取り組みやすいものです。けれども、5については赤鶏でなければ難しいところがあります。それは、ゆっくり育てることとゆったり飼育密度を低く飼育することが該当します。スローグロースの赤鶏は、各国のアニマルウェルフェアを重視した飼育方法に合致するということで、注目を集めています。

スローグロースを使ったり、アニマルウェルフェアを取り入れたりするとどのような影響があるか、生産者サイドから説明したいと思います。

下の表は、2004年8月から2005年8月にかけてイギリスのRSPCA(英国王立動物虐待防止協会)が調査を行った結果です。

脚の炎症やひよこが到着した時に死亡した割合、斃死率など記載されています。減耗や脚の不良などが、一般のブロイラーに比べてスローグロースの方が圧倒的に少ないことがわかります。

次は2015年にオランダで行われたブロイラーに対する抗生物質の使用の調査結果です。

抗生物質摘発の日数は、一般ブロイラーでは1年あたり13日ですが、スローグロースは2.2日です。抗生物質の使用は、およそ6分の1に抑えられています。スローグロースの方が鶏の病気の発生が少ないことを示しています。

次の表は、年毎の減耗の割合です。

一番上がファーストグロースの掛け合わせです。上から2番目は、スローグロースとファーストグロースの掛け合わせ、3番目はスローグロース同士の掛け合わせです。1日あたりの減耗は、スローグロースを使った方が2.5倍少なくなっています。

抗生物質の使用はどうしてよくないと言われるのでしょう。世界的に薬剤耐性菌が問題になっていて、サミットなどでも議題の一つとなっています。動物や畜産動物に抗生物質を使うことによって、糞便や糞便を堆肥にして作った農作物などを介して人に薬剤耐性菌が感染することがあります。

薬剤耐性菌の場合は、人が病気になった時に抗生物質を投与しても全く効かないことになります。抗生物質も病気とのイタチごっこになるので、一つの菌に効く抗生物質を開発するにも時間がかかります。極力、薬剤耐性菌が発生しないよう取り組みをしていかなければならないところです。最近では複数の薬剤に耐性がついている耐性菌も存在が指摘されています。

最後に、まとめとして説明したいと思います。

世界的なアニマルウェルフェアへの関心の高まりのなかで、一般のブロイラーでは肉質の欠陥がでてきています。スローグロースの鶏種つまり、赤鶏のニーズが高まってきています。

鶏に過度の無理をさせない飼育方法のスローグロース鶏種を使うことが持続可能な農業の実現に必要不可欠です。

スローグロースは、ブロイラーに比べて抗病性が高く、病気になることも少ないので、薬剤耐性菌の原因となる抗生物質の投与も必要最低限で済みます。

結果的に、アニマルウェルフェアを実践することで、人も鶏も健康になります。

環境面では、一羽あたりの飼料を少なくする。抗生物質を減らすことで、薬剤耐性菌の発生リスクを減らす。社会面では、アニマルウェルフェアの実現や鶏肉本来の肉質の追求をする。経済性では、斃死や炎症や病気で減耗することを避ける。よりよい肉質で高付加価値化する。これら3つの側面を組み合わせて持続可能な農業を実現していきたいと思います。

最後に、日本赤鶏協会の宣伝をさせていただければと思います。

「鶏にも、『赤』という血統。」というコミュニケーションワードを使って、今後赤鶏を普及していきたいと思っています。

もう一つ、今後このマークをみることがあれば、スローグロースの赤鶏を使っていることが一目でわかるロゴマークになっています。今後お店や飲食店などで見かけることがあれば、購入したり食べたりしていただければと思います。

ご清聴ありがとうございます。

池嶋
鶏博士になれそうなくらい、鶏肉に関する詳しいお話をありがとうございます。

本日は「鶏肉をどう選ぶ?」というタイトルにしています。一般の人がスーパーに行った時など、 鶏肉をどう選んだらいいか、一言アドバイスいただけるでしょうか?

山本
今まで説明してまいりましたが、ブロイラー、赤鶏、地鶏とそれぞれお肉に特徴があるし単価も異なります。使うシーンによって選んでいただければと思います。ブロイラーの場合は、色々な味付けに合い、比較的安価になるので使いやすい食材といえます。赤鶏は、お値段は少し高くなりますが味はよくなります。地鶏はさらに高価になります。

池嶋
三種類の鶏の比較表をもう一度共有していただけるでしょうか? この表一つで鶏肉の種類と、アニマルウェルフェアへの配慮の段階を示しているといえますね。この表をもとに3種類の鶏肉から使うシーンに応じて選ぶと理解してよろしいでしょうか。

山本
はい、そうですね。

池嶋
貴重なお話をありがとうございます。

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