「「アニマルウェルフェア」の成り立ちを一から聞いてみよう!!ヨーロッパ各地のスーパーを訪ねて見えてきた、最新の動向とは?」【後半】

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EUの生産方法の表示はBSEが発生したことで制度化されました。EUが単一市場になって大きくなり、27カ国どの国で作ったものでも流通させる時に、どこでどのように生産されたものか明確にする必要性が強まりました。トレーサビリティーがあって追跡できる、透明性がある、はっきりわかる。卵だけではなく、鶏肉などのお肉でも、スーパーで購入した時にロット番号があるので、生産履歴が全てわかるようになっています。それが食品安全やフードチェーンの一貫性に繋がります。生産から消費までをしっかりと消費者に伝える、何か問題があった時にすぐに遡ることができるなどが重要になります。

EUでは、Farm to Fork戦略として公正で、健康的で、環境に優しいフードシステムを作ることを目指しています。全体的な大きな目標があり、その中にアニマルウェルフェアについても言及があります。畜産はヨーロッパの食料生産では非常に大切な部分だし、畜産物の汚染はBSEなど人獣共通感染症問題につながります。そういうことを2度と起こしてはいけないということで、畜産に力を入れています。

資料)植木作成

表は、採卵鶏の飼育方法と表示コードです。

飼育方法別に生産表示コードが付けられていて、改良型ケージは3、平飼いは2、放牧は1、有機は0になります。表はフランスの基準を参照にしていて、1960年代から伝統的な生産物を守ることを目的に作られたラベルルージュという認証が含まれ、放牧の中でもより厳しい基準となっています。有機では、鶏が食べる餌についても、農薬や化学肥料を使わない有機を使うことが求められます。生産コードが0に近づくにつれて、より厳しい基準の育て方となります。分かりやすい3から0までの数字が、全ての卵に印字されています。

フランスの事例です。私が現地で撮影したものです。

自然食品店の老舗Biocoop。街中にある高級な自然食品チェーン ナチュラリア。後に紹介するモノプリというチェーンに買収されています。日本からは撤退したカルフールという大手スーパーも今ではBio専門のチェーンを展開しています。日本ではイオンが経営しているビオセボンなどもあります。これらの自然食品店では、有機や放牧の卵が販売されています。

都市型の高級スーパー モノプリは、数年前からケージフリーの卵のみを使うことを宣言し、ケージ卵の販売はありません。

店頭では、看板に卵についているマークの説明がしっかり表示されています。エンリッチドケージの扱いはありませんので、エイビアリーの平飼いが一番安く、放牧、有機の卵の順に高くなります。写真右側のLoue社の卵のパッケージを開けると、卵に記号番号が印字されています。


左側の方に「0」の文字が印字されて、有機であることを示しています。次にフランス産を示す文字と、生産者番号の順に書かれています。

図式化すると、このような印字の内容となります。

撮影)植木
郊外型のスーパーUでも、卵売り場には大きな看板があって、3から0までの鶏の飼育方法が説明されています。このような説明があると、消費者はエンリッチ(改良型)とはいえ、3番のケージを次第に買わなくなっていきます。ケージのものはよくないかしらということで、3番よりは2番を買いましょう。少し余裕のある時は1番を書いましょう。ご馳走を食べたい時は0番 ビオ(BIO)のものを買いましょう。というように消費者の行動が変わってきます。ですから、きっちりとした分かりやすい表示がとても大事だということになります。生産者にとっても、どのような飼育方法なのか、きっちり伝えることができます。

フランスのマルシェで販売されている卵にも、同じように生産方法などが印字されています。

資料)植木作成
フランスでは有機農業が盛んだという話をしましたが、EUとして有機農業に補助金を出しています。

慣行農業から有機農業に転換をする際、農薬や化学肥料を使用しないなど栽培方法が変わって大変になります。EUでは、そのことに対して転換補助金を出しています。それを継続していくと、継続補助金が追加されます。

補助金は税金なので、以前は量を作れば補助金が出る仕組みでしたが、そうではなく環境を守るようなことに対して補助金を出していこうということに変わっています。

国も補助するし、EUも有機農業に対して補助するなかで、アニマルウェルフェアに関しても補助金が出る仕組みになっています。


こちらの写真はブルターニュの酪農地帯ナントの近郊です。ウォッシュタイプのチーズを日本でも有名なゲラントの塩と同じ水域の海水で洗って作っています。写真の女性は、当時のフランスの有機農業生産者連盟の会長です。

牛はフランスの伝統的なモンベリアールです。除角していないんですね。牛は、一般には角があると危ないということで除角をします。けれども、シュタイナーの教えにしたがったドイツのデメターという有機農業の基準では、除角をしてはいけないことになっています。

写真でなぜ一頭だけこちらを向いているかというと、出産したばかりなんです。搾乳牛では、出産しても自分の子供にミルクを与えることができません。代用乳を与えて、そこから日本のBSEも発生したと言われます。この農場では、生まれた牛には乳母のような牛がいて、そのミルクを飲むことになります。この母牛は、生まれたばかりの子牛を呼んでモーモーと鳴いているところです。アニマルウェルフェアを考えると、なかなか難しいところがありますね。

イタリアでも、平飼い卵が普及しています。
北イタリアに卵の生産者が多いことや、ケージを作っている会社があるので調査に行った時の写真です。

スーパーに行くと、平飼いの卵のキャンペーンをしていました。フランスと同様、飼い方を示す大きな看板が掲示されています。

イタリアでは、赤ではなく緑色で卵の生産方法などが印字されていることが多いようです。

写真では左上に「0」とあるのでBioで「IT」イタリアの生産品であることがわかります。価格は、たまたまセールをしていて4個入りで約160円。1個当たり40円くらいとなります。日本で有機の卵というと、一つ150円とか場合によっては数百円で売られていることもあります。イタリアでは、スーパーで比較的手頃な価格で有機の卵を買えることになります。

フランスの話に戻りたいと思います。パリの5区はソルボンヌ大学やパンテオンやカルチェラタンなどがあり、日本の文京区のようなところです。学校給食にできるだけ有機の農産物や畜産物を使う取り組みを2014年頃に調査しました。豆の料理やスープから始まって、パンなど学校給食でもフルコース。デザートとチーズまで全てBIOで出てきて感動しました。日本と違うのは、全員が学校給食を食べるのではなく、お弁当を持って行ってもいいし、帰って食べてもよいなど自由度が高くなっています。フランスが有機農業に力を入れている一旦を垣間見ることができました。

この産地を訪ねると、牛がゆったりと飼育されているところを見ることができました。


生産や食生活など社会全体を変えていくには、色々な取り組みを行っていく必要があると思いました。

 

EUで2010年には慣行型のバタリーケージが45.4%ありましたが、2012年に禁止されて、2015年にはゼロになっています。それに代わって、エンリッチドケージ(改良型ケージ)が56.1%と半分以上になっています。改良型ケージの卵はスーパーではあまり売られていませんが、どこにいったのかというとそれは加工用になるんですね。

加工用については印字の必要はありません。けれどもとても安くて生産者は採算が取れないので、ケージフリーに変えたいという人もいるし、やめていった人もいると思います。改良型ケージは、EUで認められてはいますが、無くなっていく方向にあると思います。市民、消費者がこれを支持しないということになってきています。

アニマルウェルフェアや有機の表示には写真のような様々なものがあります。卵の場合は、卵一つ一つに表示があるということで、消費者の理解を促進するのにとてもよかったと思います。CIWFやRSPCAも全てに表示することが大事であると、生産方法の表示を評価しています。一部のよい生産者だけに表示するのでは高い効果を得ることができないという面が指摘されています。卵の次は鶏肉ですね。鶏肉も新しい表示が始まっています。


資料)植木作成
このようなラベルが商品に貼り付けられています。

鶏肉の例では、レベルがAからEまであります。Aが一番アニマルウェルフェアのレベルが高く、Bが放牧、Cのベターチキンは、EUやアメリカやカナダの外食などで使われる基準くらいになります。Dは、EUの標準的なもので、EはEUの最低基準を満たすものです。

一つのラベルを見ればAからEまでの5段階あることが分かり、図柄からは飼育方法がおよそ推測できるデザインとなっています。

鶏卵以外の新しい表示の取り組みで、全面的ではないものの、スーパーなどで扱いが広がりつつあります。

アニマルウェルフェアのレベルの高いものだけ表示をするか、全ての生産方法を表示するか、比較してみます。

市場での広がりやすさ、消費者への情報提供としての有用性、人道的なシステムへ移行を促す公正な競争の確保などの面で、全ての商品に生産方法を表示する方が、より効果的なことがわかります。


最近は、有機JASの商品などでも表示がより詳しく書かれるようになっています。こちらの商品の裏には、有機JASやレインフォレストアライアンスが何かといったことが、詳しく書かれています。ヨーロッパなどでは、表示をより詳しく丁寧にすることで消費者によりよく伝えるという流れがあると思います。

日本にも食品表示法があって、最近新しくなりました。

食品表示の目的は、

・安全性の確保、自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保

・一般消費者の利益の増進

と合わせて、

・消費者の需要に即した食品の生産の振興に寄与する

というのがあります。消費者の利益だけではなく、生産にとっても大事だということですね。

アニマルウェルフェア発展の歴史やヨーロッパでの現地の状況や生産表示の発展を見てきました。本日はありがとうございます。

池嶋

植木先生、多岐にわたるお話をありがとうございます。

植木先生が生活のなかでアニマルウェルフェアや有機の視点を取り入れながら、卵をはじめ色々な食品選びをされていることが伝わってきて、とても貴重な機会でした。

植木

食べ物なので、頭で考えるばかりでなく、食べて美味しいとかこういうものを食べたいとか、楽しむのがよいのではないでしょうか。それがひいては社会を変えていくことになろうかと思います。皆さまも、楽しみながら社会を変えていくということでいかがでしょう。