鶏肉をどう選ぶ?

Better Life for Farm Animals Japan 発足記念イベント
<第2回 無料ウェビナー>
鶏肉をどう選ぶ?
鶏肉に関わる「アニマルウェルフェア」について一から聞いてみよう!!
【日時】
2021年11月11日(木) 18:30-20:00

【講演協力】
一般社団法人日本赤鶏協会
山本剛史

※ 本記録は、当日のセミナーから一部の内容を抜粋した構成となっています。

Better Life for Farm Animals Japanは、2021年7月にイギリスの国際NGO Compassion in World Farmingの助成を受けたことをきっかけに発足しました。人と動物と地球の持続可能な共生を目指し、日本での家畜のアニマルウェルフェアの取り組みを応援していくことを目的に活動しています。

本日は、「鶏肉をどう選ぶ? 鶏肉に関わる『アニマルウェルフェア』について一から聞いてみよう!!」というテーマで無料オンラインセミナーを開催します。

講演は、一般社団法人日本赤鶏協会の事務局を務める 株式会社ヤマモト 代表取締役社長 山本剛史様にご協力いただきます。

山本社長、どうぞよろしくお願いします。

山本

本日は、「鶏肉をどう選ぶ? 鶏肉に関わる『アニマルウェルフェア』について一から聞いてみよう!!」という演題で講演にお招きいただきありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。

本題に入る前に、日本赤鶏協会についてご説明したいと思います。

世界と日本の社会状況と潮流を鑑み、消費者はもちろん、流通にも「赤鶏」の価値を明確に伝えることを設立の目的としています。

社会背景としては、牛肉や豚肉には格付けがありますが、鶏肉には公的な格付けがありません。 店頭には、色々な名前の鶏肉はありますが、実際には名前だけがついているものも多数ありま す。消費者が鶏肉を選ぶ時に明確な基準が必要ではないか。基準ときちんとした判断で選んでいただけるようにする必要があるのではないかという背景があります。

それと、昨今アニマルウェルフェアやSDGsに代表される持続可能な農業への意識が欧米を中心に高まりつつあります。日本の鶏肉業界も、その動きに対応していく必要があるのではないかということが、当協会の立ち上げの背景となっています。

協会のビジョンは、赤鶏ブランドの価値を高めて、消費者の方々に鶏肉の価値基準を明確にしていくことにあります。

赤鶏とはどんなものなのか、また、鶏肉の価値基準はどうなっているのか、疑問にお答えしていければと思っています。

お肉の質の判断基準として、血統、飼料、飼育方法を見ていきます。この三つがお肉の質に大きく影響を及ぼす要素になります。この三要素で分類したのが次の表になります。

まず、血統について説明します。血統は、大きく分けるとスローグロースタイプと、ファーストグロースタイプに分けられます。

味の良さを目的として改良した鶏種はスローグロースタイプで、赤鶏はこちらを使用します。アニマルウェルフェアにも対応しています。一方で、ファーストグロースタイプは生産性に重きをおいて、早く大きくなることを目的に改良したものです。

次に示すのは増体の表です。増体性や生産性や飼料の効率性を追求したのがブロイラー(若どり)と言われるファーストグロースタイプです。一方で、スローグロースタイプは味の良さやアニマルウェルフェアを考慮して、なるべく自然な速度でゆっくり大きくなる鶏種です。

日本赤鶏協会では、父母世代のオス・メスのどちらかにスローグロースを使っているのを赤鶏と呼んでいます。組み合わせによっては、オスかメスのどちらかにファーストグロースにスローグロースを掛け合わせることもあります。

スローグロースのもとになる種雛は、世界屈指の育種会社であるフランスのハバード社の鶏種を使用しています。ハバード社は、スローグロースの鶏種を沢山保有していて、スローグロース市場で世界1位の育種会社です。ラベルルージュというフランスの地鶏や、世界各国のプレミアム市場にスローグロース鶏種を提供しています。

赤鶏は、どのくらいマーケットに流通しているでしょう?

国内の鶏肉生産量の大部分がファーストグロースで、一般ブロイラーもしくは銘柄鶏となっています。赤鶏はわずか2%です。今後、赤鶏の比率を少しずつ増やしていけるように、当協会としても力を入れていきたいと思っています。

実際にどんな赤鶏のブランドがあるかというと、次の資料が全国のMAPになりますのでご参考ください。

続いて、2番目の要素の飼料についてです。

一般的にブロイラーには、早く大きくするためにカロリーの高い飼料を使っています。赤鶏には、自然な増体を促すためにカロリーを抑えた飼料を使うことが多くなります。

ブロイラーも赤鶏も共通になりますが、飼料米やハーブや梅酢など、地域の特産物を使ってブランド化しているところもあります。また機能性原料として、餌として給与することで肉質に効能があるような原料を入れたり、動物性油脂を使わず植物性油脂だけを使うなど、生産者によって創意工夫をされています。

続いて3番目の飼育方法です。

まず飼育密度がブロイラーと赤鶏と地鶏で異なります。一坪(3.3m²)あたりブロイラーは55-60羽、赤鶏は40羽程度、地鶏は33羽以下となります。

飼育期間は、ブロイラーは45-48日で短期間で効率的に出していきます。赤鶏は65-80日くらい。 地鶏では色々な鶏種がありますが、75-150日くらいが目安となります。赤鶏はゆっくり自然に大きく育てるのが特徴です。

よくある質問に、ワクチンや抗生物質や成長ホルモンの使用の有無を聞かれることがあります。 ワクチンについては、人間の赤ちゃんでも病気にかからないように予防接種をすると思いますが、鶏も同じです。雛の時は、病気に対して抗病性や体力がないので、肉養鶏では一般に全て必要なワクチンを接種しています。抗生物質は、病気を治療するために投与される薬剤ですね。これはケースバイケースです。ブロイラーの場合は、予防的に餌などに入っている場合もあります。成長ホルモンは日本では使用されていません。

先ほどのおさらいになりますが、ファーストグロースの血統は、ホワイトコーニッシュとホワイトプリマスロックの掛け合わせになります。効率を重視したかたちです。赤鶏は、スローグロースタイプを使っていて、一般的なのがロードアイランドレッドの系統になります。餌はカロリーを抑えた設計で、飼育期間は長め、飼育密度は低めになります。

スーパーなど店頭でのお肉の値段はいくらになるでしょう。 あくまで一般的な参考価格ですが、表のようになります。 100gあたり、若どりはモモが120円、ムネが70円。赤鶏はモモ170-220円、ムネ140円。地鶏は幅がありますがモモ290-500円、ムネ190-350円となります。

味は、どのような違いがあるのでしょう。

味の感じ方は、個人の主観があるので客観的に示すのは難しいですが、血統と飼料と飼育方法の三要素を加味して、横軸に歯ごたえ、縦軸に風味を示します。

ブロイラーは、短期間で効率的に飼育するので、肉は柔らかいし風味は少なくなります。その代わりどんな料理にも合います。

赤鶏は、長く飼うので歯応えがあります。風味はブロイラーに比べると高く、美味しいというこ とになります。

地鶏は、飼育期間がもっと長くなるので、歯ごたえがもっとよくなります。

成分に関しては、飼育方法などによってそれぞれ変わってきますが、当協会で調べたブロイラー (若どり)と赤鶏の比較です。

よくテレビなどで疲労回復成分としてイミダゾールジペプチドが紹介されますが、アンセリンやカルノシンがそれに相当します。ブロイラーと比べると、赤鶏の方が数値が高くなっています。

栄養価としても、赤鶏の方が優位性があると言えます。

→ 鶏肉をどう選ぶ? 【後半】はコチラから